津村信夫の紫陽花忌 1
紫陽花忌が行われました。
これは、ブログ
『戸隠に所縁のある作家 津村信夫の「戸隠の繪本」』で、ご紹介した作者津村信夫を偲ぶ会です。
戸隠の中社前広場に集合して本の題材になった「越水ヶ原」の散策や津村信夫文学碑の見学と清掃、堀井正子(近代文学研究家)さんによるお話と座談会が行われました。
中社を出発して東に通っている“横大門通り”へと散策が始まりました。
国の登録文化財「宿坊 極意」 津村の常宿「宿坊 水野」
『戸隠の絵本』中の一編「少年」は、「宿坊 水野」が
モデルです。
中社から越水ヶ原に向かって遊歩道を進むと、
山野草などが可愛らしく咲いたり、実をつけていた。
ギンリョウソウ アリオドシ
オドリコソウ オトシブミ
マルバフユイチゴ クリンソウ
この遊歩道を抜けると、津村も見ていた「戸隠山」が雄大な姿を見せていた。
津村の書いた「戸かくし姫」を思い出す。
山は鋸(のこぎり)の歯の形
冬になれば 人は往かず
峰の風に 屋根と木が鳴る
こうこうと鳴ると云ふ
「そんなに こうこうつて鳴りますか」
私の問ひに
娘は皓(しろ)い歯を見せた
遠くの薄は夢のやう
「美しい時ばかりはございません」
初冬の山は 不開(あけず)の間
峰吹く風をききながら
不開の間では
坊の娘がお茶をたててゐる
二十(はたち)を越すと早いものと
娘は年齢(とし)を云はなかつた
この詩は、このように緑あふれる美しい山だけを見ても、なかなか理解するのが難しいと思う。
でも、このブログを書くようになった昨年の冬の日に見た「雪の戸隠山」を思い出したら、この詩の意味を察することができた。
凍えた景色のなかに鋸の歯ような「戸隠山」が威風堂々と立ち、寒風が「こうこう」と吹く。津村は、自然の摂理を「戸隠山」と「娘」に重ねて見たのだろう。
そして、「戸隠山」の後方には高妻山が光って見えた。
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