2012年07月12日

津村信夫の紫陽花忌 2

前回の「津村信夫の紫陽花忌 1」より続く。

美しい「戸隠山」を見た後は、津村信夫の詩碑まで道を急いだ。

津村信夫の紫陽花忌 2津村信夫の紫陽花忌 2中社に戻り、参道東側には津村信夫の詩碑がある。
代表作「戸かくし姫」が刻まれている。

この詩碑は、地元の方たちによって建てられたもので、津村夫人の昌子さんは、「信夫の思い出」にこう記している。

『先日、戸隠に地元の方々のご尽力で信夫の文学碑が中社に建てられました。杉木立の奥に雨に濡れて建っているその詩碑を見たとき、私はまったく感無量なものがありました。「戸隠の自然に抱かれたい」と日記に記した信夫の気持ちが、今よみがえったように思えました。』とある。

「戸隠の繪本」には「紫陽花」という一遍があったり、信夫の祥月が6月ということもあるので、詩碑の周りには紫陽花が植樹され、たくさん花芽をつけて青々と茂っていた。
花の手入れや詩碑のお掃除をして、修験者による法螺貝(ほらがい)でご供養を行った。
津村信夫の紫陽花忌 2津村信夫の紫陽花忌 2
津村信夫の紫陽花忌 2



「紫陽花忌」の最後は、中社 青龍殿に場所を移して、「戸隠の繪本」の書評を書いた堀井正子(近代文学研究家)先生による信夫と昌子の出会いや馴初めから信夫が戸隠に魅かれたお話しを伺った。

津村信夫の紫陽花忌 2夏の軽井沢。
神戸の資産家の息子 信夫と長野市内の勢国堂というパン屋の娘 昌子は出会い、昌子の美しさと聡明さは信夫の心を瞬時に捉えた。その後は9時間もかかる上野~長野間を足繁く通って、昌子の兄に結婚を承諾してもらったという。なんと!この恋の成就には、「室生犀星」が尽力したというから驚いてしまうface08
その後のデートは戸隠が多かった。
信夫を魅了したのは、戸隠の「雅やかさ」と「人情豊かで気さく」な両面だったようだ。
二人が訪れた本坊の久山家は、格式のあるお屋敷で、そこの美しい娘がお茶を注ぐ所作や杉林から聞こえてくる美しい笛の音、神秘的な村々の佇まい等に「雅」を感じ、土地の男衆が誰かれなく酒を酌み交わし、野良着のまま踊る「宣澄踊」や雷雨にも関わらず、食事を運んでくれた宿坊の女の子等には、「気さくさ」や「人情」を感じた。そして、「雅や人情」が薄れかけた都会生活に疲れを感じていた信夫には、そんな戸隠が恋しくて仕方なかったという。

津村信夫の紫陽花忌 2津村信夫の紫陽花忌 2
          旧本坊久山家                          宣澄踊
写真/「戸隠の繪本」より

すると、参加者の一人が「久山家の美しい娘は・・・」と、登場人物について語り出した。
円座を作る方たちも先ほどの先生のお話に自分たちの知識を肉付けしながら、座談会は盛り上がりを見せた。20代の参加者たちも真剣に耳を傾けている。
私には「戸隠の繪本」がぐっと現実味を帯びてきた。
改めて思う。
戸隠が今と昔をうまく織り合わせているのは、土地の人々が地元を誇りに思い、昔を語り継ぎ、語り継ぎ、繰り返すことで今に受け継いでいるからなのだろう。

津村信夫の紫陽花忌 2さらに座は温まり、「宣澄踊」が披露された。

戸隠山は~
名高い小山と沙汰をするゝ
名高いお山と沙汰をする~


受け継がれた節回しを聴きながら、、「戸隠の繪本」の序章「宣澄踊」の一説を思い出す。


〈本文〉
一人のお爺さんが、ずっと私の傍らによって来た。
「此處にお祭りしてある宣澄さんと云ふお坊さんは、賑やかなことの好きなお人でしてね、お酒をあげて、わしらが踊ををどると、願ひごとは何でも聞いてくださるんで」
歯の抜けたお爺さんの顔はまるで小兒のやうであった。
「僕も頂きませう」
酒のいけない私も、知らずしらず手を出した。





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Posted by いいときナビ at 12:10│Comments(0)戸隠
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